ノロウイルスの大きさは、直径27nm~37nm。
RNA遺伝子をもち、カプシド(正20面体)構造体をもつ小さな球形のウイルスです。※1nm=100万分の1ミリ
ノロウイルス感染症はウイルス性食中毒の代表とも呼ばれる感染症であり、厚生労働省の調べでは、感染者数が年々増加傾向にあるウイルス性食中毒として危険性が示唆されているウイルスでもあります。
以前は小さな球形状のウイルス形状を持つことから小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれておりましたが、2002年に開催された国際ウイルス学会にて「ノロウイルス」と世界的に称号が統一されております。
ノロウイルスが最も猛威を奮うのは冬場です。毎年冬場になると子供たちが学校単位でのノロウイルスの集団感染が発生したというニュースが流れます。
実際は年間を通じてどの季節でも発症しやすいウイルスですが細菌類が夏場に多く感染症が拡大するのに対し、ウイルス性感染症の多くは乾燥の強い冬場に多く発生する特徴をもちます。
これはノロウイルスについても同じで、幼稚園や小学校でノロウイルスの集団感染が発生するのは秋の終わり~冬場に集中する傾向があります。
また冬場にノロウイルスによる食中毒が多く発生する原因には、日本では特にこの冬期に市場に多く出まわる食用の生牡蠣が感染源のひとつとなっていることも影響しております。
※ノロウイルス集団感染は冬場に集中する傾向がある
※食用の生牡蠣は食中毒を起こす感染源となる
尚、ノロウイルスは、なかなか死滅しにくいウイルスである点も大きな特徴のひとつです。
塩素や熱に対しては比較的強い耐性をもっているウイルスであり、水道水に含まれている塩素などでは死滅することはありません。
食中毒の対策として加熱調理をした場合でも、60度程度の温度では実に10分以上加熱したとしてもノロウイルスは死滅しないで生存できるというデータも確認されております。
ノロウイルス感染症の感染源となる食品の代表は「二枚貝」です。
ノロウイルスは前項でも解説した通り、熱に強い耐性をもつウイルスです。
加熱が不十分なまま二枚貝を食した場合に、ノロウイルスは体内に侵入し胃腸内の細胞にとりついて増殖していきます。
ノロウイルス食中毒で急性胃腸炎が多く確認されるのは、十二指腸、小腸内の細胞にとりついてRNA遺伝子を武器に増殖を果たすためなのですね。
※ノロウイルスによる食中毒では胃腸炎を発症する
※ウイルスは十二指腸や小腸の細胞で増殖する
人体に侵入したノロウイルスは、体内で増殖し糞便や時には嘔吐物として体外へ排出されます。
この嘔吐物や糞便が感染源となり人から人へ感染が拡大しノロウイルスが流行するのです。
ノロウイルスは、この感染者から伝染る二次感染能力が強い点も大きな特徴と言えます。
ノロウイルスの潜伏期間は、一般的に1日~2日程度です。
潜伏期間とは、ウイルスが体内に侵入してからノロウイルス感染症の症状を発症するまでの期間のことですね。
感染後の潜伏期間は約20時間~48時間程度です。
※ノロウイルスの潜伏期間は20時間~48時間程度で感染したその日に症状を発症するケースもある
稀に感染後半日程度と比較的早期に嘔吐や下痢などの症状を発症するケースもあります。
嘔吐や下痢、そして発熱はノロウイルス感染による代表的な症状ですが、通常は2~3日程度で症状が徐々に回復し重症化するようなケースはほとんどありません。
感染後に発熱や嘔吐下痢などを症状を発症し、2~3日経過すると、症状は回復に向かいはじめます。
体内のウイルスは次第に感染力も弱くなり通常は発症後1週間程度で他人へウイルスを撒き散らすようなことはなくなります。
しかし症状が回復してくる回復期(上図④参照)に入っても2~3週間程度ノロウイルスが体内で粘り強く活動するケースも確認されており、症状が回復してきたように感じても実際に自分自身が二次感染の感染源となってしまうケースもあるので注意が必要です。
※回復期に入っても2~3週間程度ウイルスが生きている場合もあり二次感染の感染原因となる可能性もある
ノロウイルスは全て経口感染(口からの感染)であり感染者の糞便や嘔吐物などに触れたり、空気中を漂よっているウイルスなどを口から吸い込む飛沫感染によって感染します。
その為、赤ちゃんが下痢症状を発症している場合などおむつ交換を行う際には、ビニール手袋の着用や、おむつの交換処理後には徹底した手の消毒を行い自分がウイルスの感染源とならないような予防対策を行うことが重要です。
特に一家のママは毎日の家事で食器や食材に触れる機会が多くなるため、自らが家族内にウイルスを撒き散らす感染源になってしまうようなことがないよう細心の注意を払う必要があります。
ノロウイルス食中毒の症状の特徴について見ていきましょう。
ノロウイルスの初期症状では、まず微熱が出始めるようになります。
そして最大の特徴は、「吐き気・嘔吐症状」と「腹痛症状」を徐々に発症しはじめる点です。
これは食中毒の症状の中でも代表的な症状であり、ノロウイルスによる食中毒症状も同様です。
ノロウイルスに感染してしまった場合に発症する主な症状を以下にまとめます。
【ノロウイルス食中毒の主な症状一覧】
☆吐き気症状
☆嘔吐症状
☆発熱症状(高熱が出ることは稀です)
☆腹痛症状(チクチクさすような痛みがでる場合もあります)
☆下痢症状(赤ちゃんは水のようなうんちがでます)
☆嘔吐下痢症状に伴う脱水症状
以上が、ノロウイルスに感染してしまった場合に発症する主な症状の一覧です。
尚、発熱症状の大半は初期段階に発症します。
熱は38度以下の微熱であるケースが大半ですが、熱の発症とともにチクチクとした腹痛症状が徐々に始ります。
このチクチクする痛みは、定期的に訪れるので、乳幼児・子供の場合はその都度、「お腹が痛いよ~」と泣いてしまうかもしれませんが過度な心配は必要ありません。
ただし、体力のまだ低い子供ですから絶対安静が必要となります。
乳幼児や小学生の子供は嘔吐下痢症状の発症に伴って体力が低下し食欲も低下する傾向にあります。
食事は無理をして摂取する必要はありませんが水分補給は大切ですから脱水症状を起こさないように根気よく観察を続ける事が大切です。
大人がノロウイルスに感染する原因は、冬場に流通する生牡蠣などの二枚貝から感染する場合と、子供の嘔吐物などに接触した手などを介して経口感染する場合が大半です。
特に乳幼児がいるご家庭では、子供がノロウイルスに感染し嘔吐を繰り返した際の処理や、4歳くらいまでの幼児の場合は座薬が処方されるケースも多く、座薬を挿入する際の糞便への接触が感染経路ともなり潜伏期間を得て数日後に大人が症状を発症するケースも多くあります。
大人がノロウイルスに感染した場合の症状は前述したノロウイルスの症状の特徴で解説したように微熱や嘔吐下痢、腹痛などの症状を発症するのは同じですが、大人が嘔吐下痢症状を発症した場合は嘔吐も下痢も短期的にとても強い症状を示す場合があります。
大人は子どもと比べると体力が強いため大抵は1~3日程度で症状も回復しますが、短期的な体感的な「きつさ」は大人の方が強く感じられる可能性がある点も把握しておきましょう。
ノロウイルスに感染してしまった場合の治療法について見ていきましょう。
ノロウイルス感染症はその名の通り、ウイルス性疾患ですが、現在のところノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。
ですから、有効な予防接種などもなくノロウイルス感染症の治療に関しては自然治癒力による回復を積極的に考えて安静第一の治療を行うことになります。
※ノロウイルスの予防接種はありません
※治療の基本は絶対安静が大切です
治療の基本は、何よりも安静にすごすこと。発症時は発熱を伴い、寒気やふるえを感じることもあるので暖かい服装を心がけましょう。
治療期間に何よりも注意点すべき点としては下痢による脱水症状を避けるために水分の補給を積極的に行うことです。
ノロウイルスに感染すると比較的激しい下痢症状を発症します。その為、水分が失われるスピードも急速に進みます。
赤ちゃんや乳幼児、幼児の場合は、
☆湯さまし
☆お茶
☆イオン飲料
などを少しずつ回数を多めに摂取させるように心がけましょう。
脱水症状を起こすと、自覚症状がよりきつく感じやすくなり、更に回復期間も長引いてしまう結果となるので注意が必要です。
乳幼児の場合は、水分の補給を受け付けずに吐き出してしまうケースも多く見られます。
このようなケースでは、水分補給を受け付けない状況であることを医師に相談してみましょう。
病院では点滴によって水分補給と栄養補給を行うことも可能です。
ノロウイルスにもし感染してしまった場合はどのような食事をとると良いのでしょうか?
食事の基本と症状が回復するまでの回復期間について見ていきましょう。
ノロウイルス感染症は「胃腸炎」を発症する感染症でもありますから、治療中の食事に関しては「胃に負担をかけないもの」を摂取することが大切です。
乳幼児の場合は
☆バナナ
☆おろしりんご
☆おかゆ
など消化に良い食べ物から少しずつ与え、体力が回復してきたら徐々におかずを加えていくことが大切です。
これは大人の場合も同じで・成人であっても胃腸に負担のかかる油っこい食事は極力避けるようにしましょう。
ラーメンなども油が多く胃腸に負担が多い食べ物です。食事後収まっていた腹痛が強く再発することもあります。
症状がしっかり改善するまでの治療期間は2~3日程度、長くても1週間以内に回復します。
回復期間までは食事に気を使い安静に過ごすことが何よりも大切です。