はしかは、ウイルス感染症の中でも特に「乳幼児期」にかかりやすいウイルス感染症のひとつです。
この麻疹を発症する原因となるウイルスが「麻疹ウイルス」(ましんウイルスと読む)と呼ばれるパラミクソウイルス科モルビリウイルス属に属するRNAウイルスです。
麻疹ウイルスは、一度体内に免疫が構築されると基本的に一生に渡り二度とかかることのないウイルスです。
その為、免疫獲得のために生ワクチンの予防接種が乳幼児期に行われております。
※麻疹と書いて「ましん」と読みますが日本では「はしか」として認識されている為、潜伏期間ナビでは「はしか」という日本で広く認識されている表現を用いております。尚、近年は本来の読み方である「麻しん」と記載されるケースが増えておりますがどれも同一のウイルス感染症を示しております。
はしか(麻疹)の症状の特徴について見ていきましょう。
はしかの症状は、まず初期症状の段階で、一般の「かぜ症状」によく類似した症状を発症します。
この風邪と類似している症状を示すことから感染している事に気づかずに、ある程度日数が経過した後に麻疹と診断されるケースも多くあります。
尚、麻疹は複数の合併症を発症する危険性を持つウイルス感染症であり特にウイルス性脳炎を発症した場合は高い確率で命の危険性を伴う事になるため軽視できない感染症であることを把握しておく必要があります。
麻疹の予防対策は基本的に予防接種による免疫の獲得しか方法はありません。
乳幼児期の感染確率が非常に高い感染症であるため、早い段階で予防接種を検討するようにしましょう。
尚、はしかを発症してしまった際の代表的な初期症状は以下の通りです。
【はしかの代表的な初期症状】
★発熱(38度前後の熱が出ます)
★咳(上気道炎症状)
★鼻汁
★目の充血(結膜炎症状)
★コプリック斑(口腔内に小さな白色の発疹が発現)
この初期症状は症状の発症直後はほぼ風邪と同等の症状を示す為、区別が難しくなりますが、発症後3日~4日程度でコプリック斑が現れるため、この段階で麻疹の診断が容易になります。
初期症状が見られる期間は麻疹発症後、約3日~5日程度の期間です。
約5日を経過するとその後は一度症状が軽減し発熱も徐々に下がり改善したように感じられます。
この初期症状の段階は麻疹の「カタル期」と呼ばれている期間です。
※はしかのカタル期では一時的に発熱が続き徐々に熱が下がり始める。発症から数日経過後には口腔内に小さな白い粒上のコプリック斑が確認される。
麻疹のカタル期を終えると熱は一時的に下がり自覚症状は一時的に軽減しますが、解熱が確認されてからおよそ12時間~18時間程度経過すると「発疹期」と呼ばれる最も症状が厳しく現れる期間が訪れます。
発疹期ではその名の通り全身に渡り赤色の小さな発疹が顔や体幹部(胴部・背中)を中心に発現し、四肢に広がっていきます。
この発疹期に発症する発熱は40度近い高熱となるケースもあり、全身に渡る痛みや倦怠感、強い脱水症状なども現れ、体感的には最も苦しい症状が2日~3日程度継続します。
はしかの発疹期では、このように高熱と全身に渡る発疹、そして脱水症状の3つの症状がほぼ確実に現れることを覚えておきましょう。
麻疹ウイルスの感染経路について見ていきましょう。
麻疹ウイルスが我々「ヒト⇒ヒト」へ感染する経路は「飛沫感染」・「接触感染」・「空気感染」による感染経路です。
飛沫感染とは、「咳」や「くしゃみ」などによって感染者から空気中に放出されたウイルスによって感染することを言います。
空気感染は感染者の咳やくしゃみが空気中を漂い第三者が麻疹ウイルスを含む空気を吸い込むことで感染します。
空気感染・飛沫感染は、感染経路としては最も広がりやすい感染経路であり、感染者のみならず周囲の人も注意が必要な感染経路です。
※空気感染や飛沫感染は最もウイルスが流行しやすい感染経路です。麻疹ウイルスの感染力の強さは空気を媒介として感染する性質が大きく関与しております。
麻疹ウイルスの潜伏期間は、一般的に9日~12日程度と比較的長い潜伏期間があります。
潜伏期間とは、ウイルスが体内に侵入してからカタル期にあたるはしかの初期症状を発症するまでの期間のことですね。
はしかは非常に感染力の強く流行性の高い感染症であり、ウイルスに感染すると潜伏期間の段階から第三者へ二次感染させてしまうウイルスを排出しはじめます。
特に1回目の初期段階の症状を発症し始める③カタル期の感染力は最も強く、その後徐々に感染力は弱まっていきますが④の発疹期を終え⑤の回復期に入っても数日間はウイルスを排出します。
尚、はしかを発症した場合は⑤の回復期から3日間経過するまで幼稚園や学校へ登校することができません。
※学校保健安全法施行規則では発疹期の解熱後の回復期から3日を経過するまで学校への出席を停止する基準が定められております。
現在世界的に「生ワクチン」の予防接種による麻疹の撲滅活動が行われております。
その為、現在では麻疹が大流行する事はほとんどなくなっております。
しかし、現実的には日本でも毎年年間数十名の方が、未だ尚はしかによって命を落としている現状があります。
この最大の原因は予防接種の接種率が100%となっていない為です。
麻疹はウイルス感染症というイメージがやや少ないかもしれませんが、「麻疹ウイルス」というとても感染力の強いウイルス感染症である点を自覚し、必ず生ワクチンの予防接種を受けるように心がけましょう。
麻疹ウイルスは、体内に免疫を獲得するとその免疫は生涯持続します。
生後半年以内の乳幼児期は母親からもらった受動免疫(IgG)によって麻疹へ感染しにくい状態にありますが、はしかは2歳未満の子供に圧倒的に多く発症する感染症でもある為、予防接種に関してはやはり発症しやすい乳幼児期の間に予防接種を受けておくことが大切であると言えます。
はしかの治療法と回復までに必要となる日数の目安について見ていきましょう。
はしかの発症となる麻疹ウイルスの対策は、現在のところ生ワクチンの摂取による免疫の獲得しか方法はありません。
生ワクチンは基本的に予防の段階で行う予防接種が基本です。
しかし、感染者との接触後、原則として3日以内であれが、ワクチンの接種により発症を抑えることも可能です。(※100%ではありません)
これは、麻疹ウイルスに感染後、ウイルスが体内に侵入し症状を発症するまでの待機期間である潜伏期間が1週間以上存在する為です。
麻疹の場合はこの潜伏期間内においても生ワクチンの接種効果がある程度期待出来る可能性があります。
尚、症状を既に発症してしまった場合の治療の基本は、何よりもまず安静に過ごすこと。
また症状の発症時は発熱を伴い、寒気やふるえを感じる事もあるので暖かい服装を心がけましょう。
治療期間に注意点すべき点としては発疹期の39度を超える高熱への対処です。
高熱を発症すると体内の水分は熱を抑える為に大量の汗として体外へ放出されるため水分の補給を積極的に行う必要があります。
特に乳幼児の場合は、水分が欲しいことを自分で伝えることができません。
その為、脱水症状を起こす前に、一度に大量に水分を与えずに少しずつ回数を小分けにして水分補給をしてあげましょう。
水分は吸収力の高い「イオン飲料」などを少しずつ回数を多めに摂取させてあげるように心がけてあげると良いでしょう。
尚、乳幼児の場合は、水分の補給を受け付けず吐き出してしまうケースも多く見られます。
このようなケースでは、水分補給を受け付けない状況であることを医師に相談しましょう。
病院では「点滴」によって水分補給と栄養補給を行うことも可能です。
特に麻疹の症状はかなり苦しい症状を示すために病院の診察で麻疹の診断を受けた場合は入院を勧められるケースが多くあります。
この場合は、医師の指示通り病院へ数日入院しながら治療を行なっていくと安心に繋がります。