結膜炎は目ヤニやまぶたの腫れ、目がゴロゴロするなど幾つかの独特の症状を発症する目の結膜に炎症を生じる疾患のひとつです。※結膜とは目の白目部分のことです
結膜炎は幼少期からかかりやすく割と身近な目の病気でもあるため、既に発症経験をお持ちの方も多いかもしれません。
この結膜炎の原因となる物質やウイルス、細菌はとても幅広く、感染源となる原因ウイルスや細菌から結膜炎は大きく3種類の結膜炎に分類されます。
※結膜炎は発症の原因物質の特徴や感染経路から大きく3種類の結膜炎に分類される。
ここではまず、3種類の結膜炎の分類について確認しておきましょう。
結膜炎は大きく分類すると「ウイルス性結膜炎」・「細菌性結膜炎」・「アレルギー性結膜炎」の3種類の結膜炎に分類することができます。
【結膜炎の種類】 | ||
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分類 | 原因菌・ウイルス・疾患 | |
①ウイルス性結膜炎 | ウイルス感染症(アデノウイルス・エンテロウイルス70型・コクサッキーウイルスA24変異株) | |
②細菌性結膜炎 | 細菌感染症(インフルエンザ菌・肺炎球菌・黄色ブドウ球菌・クラミジア菌・淋菌) | |
③アレルギー性結膜炎 | アレルギー疾患 |
ウイルス性結膜炎はその名の通り、ウイルス感染によって結膜に炎症を発症する目の疾患です。
ウイルス性結膜炎は原因となるウイルスから更に3種類のウイルス性結膜炎に分類されます。
【ウイルス性結膜炎の分類】 | ||
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分類 | 別称 | 原因ウイルス |
流行性角結膜炎 | はやり目 | アデノウイルス8型・19型・37型 |
咽頭結膜熱 | プール熱 | アデノウイルス3型(4型・7型) |
急性出血性結膜炎 | アポロ病 | エンテロウイルス70型 コクサッキーウイルスA24変異株 |
流行性角結膜炎は別称「はやり目」とも呼ばれるように他人への感染力がとても強いウイルス感染症です。
アデノウイルスの型は現在51の型が確認されており、潜伏期間は約1週間程度です。
但し、流行性角結膜炎の原因ウイルスであるアデノウイルス8型は2週間程度の潜伏期間を得てから症状を発症するケースも確認されております。
流行性角結膜炎の主な症状は目の充血と多くの目ヤニの発症、そして角膜部分に点状の小さな混濁や炎症を生じるケースがある点です。※角膜は目の黒目部分にあります
結膜炎だけでなく角膜部分に炎症を発症する特徴を持つことから結膜炎と角膜炎の双方の症状をもたらす疾患として流行性の「角結膜炎」と呼ばれております。
※流行性角結膜炎は結膜炎だけでなく発症後に角膜炎を発症する特徴を持ちます。症状はまず白目部分の充血からはじまり、黒目にある角膜部分は結膜炎発症後数日経過した後に症状が現れる傾向にあります。
咽頭結膜熱は誰もがおそらく経験のある「夏かぜ」の代表とも呼ばれる疾患です。
ウイルス性結膜炎の分類の表にあるように別称プール熱とも呼ばれるこの疾患はプール熱の主要症状と同等の症状をもたらすことから、咽頭結膜熱=プール熱と認識されておりますが、(間違いではありません)咽頭結膜熱は夏かぜの全般的な症状を示す疾患でもあります。
尚、咽頭結膜熱の代表的な症状は「咽頭炎」・「結膜炎」・「高熱」の3つの症状であり、この3つの症状を咽頭結膜熱の3大症状と呼びます。
咽頭結膜熱の症状と潜伏期間に関してはアデノウイルスの潜伏期間の項にて詳しく解説しておりますのでご参照下さい。
急性出血性結膜炎は別称「アポロ病」とも呼ばれる感染力がとても強いウイルス感染症です。
この病気が大流行した1969年はアポロ11号が人類初の月面着陸を果たした年度でもあり、この偉業からアポロ病という名称がつけられたとされております。
症状の特徴は流行性角結膜炎の症状と類似しており、目の強い充血や大量の目ヤニが発症しますが、角膜に炎症をおこすことはありません。
出血性という名称から目に出血が見られるように感じられますが、実際に目の血管部分に直接出血を発症するケースは稀です。
急性出血性結膜炎の最大の特徴は、感染力の強さと感染後1日程度で症状を発症するという感染力の短さが大きな特徴にあります。
※急性出血性結膜炎の潜伏期間は約1日と短い
細菌性結膜炎とは、ウイルス性結膜炎の発症原因がウイルスであることに対して、微生物や細菌に感染することによって結膜に炎症を生じる疾患の総称です。
細菌性結膜炎の原因となる細菌には多くの種類が存在しますが、代表的な菌類には以下のような細菌が挙げられます。
【細菌性結膜炎の主な原因菌】
★インフルエンザ菌
★肺炎球菌
★黄色ブドウ球菌
★クラミジア菌
★淋菌
クラミジア菌や淋菌は主に性病で知られる細菌類ですが、感染者の手などが感染源となり接触感染を通じて結膜炎を発症するケースがあります。
細菌性結膜炎に限らず結膜炎を発症すると代表的な症状として、目の充血や眼球の痛み、大量の目ヤニなどを生じやすくなります。
尚、細菌性結膜炎の治療では発症原因である原因菌に対して有効とされる「抗生物質」と「抗菌剤の点眼液」を点眼する治療を行なうのが基本です。
ウイルス性結膜炎では、細菌性結膜炎との併発を防止するために点眼剤を使用するケースがありますが、細菌性結膜炎のみの発症の場合は抗生物質と抗菌剤による治療で約1週間程度で症状が回復します。
尚、抗生物質と抗菌剤入の点眼剤は原因となる細菌類に合わせて成分が異なる為、市販の目薬ではなく必ず眼科で処方された点眼液を使用するようにしましょう。
アレルギー性結膜炎は、花粉やイエダニに代表されるアレルギーを引き起こす原因物質である「アレルゲン」の影響を受けて結膜に炎症を生じる疾患です。
対象となるアレルゲンが角膜に付着するとアレルギー性結膜炎を発症します。
アレルギー疾患では、鼻や気管支の粘膜に付着すると鼻炎や気管支喘息の発症に繋がるため、治療ではアレルギー体質そのものの改善が求められることになります。
アレルギー性結膜炎の治療ではまず根本的な原因である「アレルゲン」を特定し、ひとつのアレルゲンずつ対処していく必要があります。
短期間で完治することはありませんので、季節ごとの対策やハウスダスト対策など日常生活の範囲内から少しずつ改善していくことが重要です。